トップページ 幸せな会社組織をつくる できるマネージャは質問が7割。価値観が違うメンバーとも成果を出せる「質問家」のメソッドとは

幸せな会社組織をつくる

2018年07月13日

できるマネージャは質問が7割。価値観が違うメンバーとも成果を出せる「質問家」のメソッドとは

この記事をシェア twitterfacebookこのエントリーをはてなブックマークに>追加

質問家・松田充弘(まつだみひろ)さん。

「多様性ある組織」の重要性が叫ばれる現在。企業には、働くことに対してさまざまなスタンスや価値観を持つ個人が入社してきます。それ自体は悪いことではありませんが、マネージャやリーダーといった中間管理職の立場では、「若手の考えていることが全然わからない……」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

互いのスタンスや価値観を超えて理解し合うためには、何が大切なのか。今回はこの疑問を、『人の心を動かす使える質問』の著者である質問家・松田充弘さんとコンサルタント・日小田正人さんにぶつけてみました。毎日2万人が読むメールマガジン「魔法の質問」の発行や、恋愛や子育て、経営など幅広い領域でのコミュニケーション課題を解決する研修を手がける松田さん。そのメソッドを伺いながら、多様性の時代に管理職が身に付けるべきスキルについて考えます。

松田 充弘(まつだ みひろ)

質問家。「魔法の質問」主宰。しつもん経営研究所有限会社取締役。カウンセリングやコーチングの理論をベースに、自分自身と人に問いかける独自の「しつもんメソッド」を開発。『しつもん仕事術』『ビジネスで一番大切なしつもん』(ともに日経BP社)、『人の心を動かす使える質問』(朝日新聞出版)など著書多数。

日小田 正人(ひおだ まさと)

株式会社日小田コンサルティング代表。販売心理学の理論をベースに「しつもん営業メソッド」を開発。質問を使った問題解決思考の企業研修で年間200日以上活動中。しつもん経営研究所有限会社の取締役として、ビジネス質問家の育成にも尽力している。

長年一緒にいる夫婦でさえ、相手の価値観をわかっていない

質問メソッドについて語る、松田さん

——松田さんの「しつもんメソッド」は、ビジネス分野はもちろんのこと、ありとあらゆる人間関係の課題に対応していますね。

松田:質問力を鍛えることは、恋愛や夫婦関係にもよい影響をもたらします。自分で自分のことをわかっていないと、「どんな相手が自分にぴったりなのか」もわかりません。面白いことに、長年夫婦で一緒にいても、「相手は何が趣味なんだろう?」ということさえ、よくわからないというケースがたくさんあるんですよ。

——夫婦であっても?

松田:はい。僕たちは恋愛に関する教材も作っていて、その中には「2人の価値観を見つける」という、カードを使ったコンテンツがあります。「一緒に時間を過ごしたい」「こんな言葉を言ってほしい」「スキンシップをしたい」「家事などを手伝ってほしい」「プレゼントがほしい」といった、価値観を表す5つのカードです。夫婦の場合は、まずこれを「自分が優先してほしい順」にそれぞれ並べるんですね。この時点で、自分が気づいていない優先順位を考えて把握してもらいます。次に、「相手の優先順位はおそらくこうだろう」と想定してカードを並べてもらう。そうすると、たいていは合っていないんです(笑)。

——相手がどんなことで喜ぶのか、夫婦という関係でも意外とわかっていないものだと。

松田:そうです。夫は「プレゼントが一番だろう」と考えているけど、妻は「言葉をかけてもらうことが何より」と思っている。そんなことがままあるわけですね。これがすれ違いの原因になっています。上司と部下も同じで、相手の優先順位を知らないからいろいろな問題が起きるんです。

——具体的には、どのようなシーンで問題を目の当たりにされましたか?

松田:社員研修です。同じ部署で5年くらい一緒にやっているチームの方々に「仕事で大切にすべきことは何ですか?」といった質問に答えてもらう。そうするとほとんどのチームで、研修の終わりに「そんなことを考えていたなんて知らなかった!」という感想が出てくるんです。ある人はスピードを大切にし、ある人は正確性を重視している。5年間一緒にやっていても価値観の優先順位は違うわけで、「そりゃ合わないよね」と。

——なるほど。それがすれ違いを生んで、チーム内では「なんで君はそんなに仕事が粗いの?」といった質問が飛ぶような状況になるわけですね。

松田:まさに。でもその質問は、「絶対にやってはいけないNG質問」ですね。

——NG質問?

松田:「なんでそんなに仕事が粗いの?」とか、「なんでこんなこともできないの?」とか。「これではうまくいかないんじゃない?」とやり方を否定するような言い方はもう最悪ですね。互いの違いを理解していないのに否定しているわけですから。

質問は1対1ではなく「全員で考え、答え合う」

株式会社日小田コンサルティング代表・松田さん

——もし違いを理解できたとしたら、どのような質問を投げかけるべきなのでしょう?

松田:「なぜ?」「なんで?」といった問いかけは過去を掘り起こす意味があります。これはビジネスの現場ではあまり建設的ではなく、相手にはネガティブな印象ばかり伝わってしまう可能性があります。それよりは、未来をイメージさせる建設的な質問をするべきです。「どうすれば仕事の正確性が高まる?」「どのように取り組めばできると思う?」といった具合に。これをただ質問するのではなく、会議形式など、複数で一緒に答えを考えることができればより効果的だと思います。

——1対1ではなく、複数で考える?

松田:はい。1対1では「あなたがそう考えているだけでしょ?」と反発されてしまうかもしれない。でも複数で考え、アウトプットし合うことで、腹落ち度合いは大きく変わってきます。これは企業理念や社是・社訓、クレド、職場のルールなどを浸透させていくためにも有効なんですよ。例えばルールを浸透させていくために、企業ではどのようなことが行われていると思いますか?

——「唱和」したり、「読み上げ」をしたり……。

松田:そうそう。よくあるパターンなんですが、これらはあまり意味がないと思っています。僕はそれよりも、「ルールを質問形式に置き換えてみんなで答え合う」ということを推奨しています。そうするとルールをインプットするだけでなく、それぞれアウトプットすることになる。アウトプットをするとき、人間は自分の頭の中で咀嚼して考え、結論を出して発言しますよね。このプロセスが重要なんです。

例えばあるホテルで、「スタッフは紳士淑女として振る舞おう」と定めていたとします。これを質問に置き換えると「紳士淑女とはなんだろう?」ということになる。これを全員で考え、アウトプットし合うことで、紳士淑女という言葉の共通認識が出来上がります。

——たしかに、言葉としては共有されていても、それぞれの理解の仕方までは共有されていないということが組織にはたくさんありますね。

松田:よい質問には、そうした「理解度」をすりあわせしていく効果があります。日常で起きる問題点への対策を考える際にも、この方法は有効ですよ。

上司はただ部下に質問を投げかけるのではなく、みんなで一緒に考える場を設けるべき――。そのアドバイスは胸を打つものの、日々忙しい中でそうした時間を作るのは至難の業かもしれません。実際に質問力を有効活用しているマネージャやリーダーは、日頃どのように実践しているのでしょうか。

『人の心を動かす使える質問』の共著者であるコンサルタント・日小田正人さんは、「日々の会議の中で2分間を使うだけでも有効」と話します。続いて、日小田さんに「できる管理職」の秘訣を聞いてみました。

朝礼や日々の会議体も「質問の場」にできる

日小田正人(ひおだまさと)さん

日小田:私はダメ上司だった経験があるんです。初めてマネージャになり、5人の営業メンバーを任されたときは、「なんで?」と過去のことばかり聞いて、ひたすら指示を飛ばすダメな上司でした。結果、1年後にはそのチームの4人が辞めてしまって。

——5人のうち4人が退職とは……。かなりまずい状況ですね。

日小田:いわゆる「詰め会議」ばかりやっていました。5人のメンバーにそれぞれの「売れない理由」を聞こうとして、たいていは最も売れない1人について1時間くらい費やすと言う。メンバーにとっては、全くもって安心できる場所ではなかったと思います。

——その状況を想像するだけでも辛いです。

日小田:「なぜ?」と過去のことばかり聞く会議を続けた結果、メンバーは受注が決まらない理由しか考えないようになってしまいました。お客さまの本当の要望を聞けないから、対策を考えることができません。成果にこだわっているつもりが、チームにとってはマイナスに作用する一方でした。今では反面教師として当時の経験を語っていますね。

——同じような状況に陥っているチームは多いと思います。マネージャも忙しくて、互いに質問し合うような時間をなかなか作れないというのが実情ではないでしょうか。

日小田:日常の中に工夫のしどころがあります。例えば朝礼や日々の会議体。マネージャやリーダーはそうした場を活用して、指示だけでなく質問を投げかけるべきでしょう。営業現場なら「目標へ向けた達成方法をどう考えている?」と聞いてみるとか。

会議の冒頭2分間をマネージャからの質問にあてるだけでも、チーム内のアウトプットは活性化されると思います。スタンダードな質問としては、「この会議が終わった後にどうなっていたい?」と聞いて参加者全員に発表してもらうという進め方もありますね。

——1つの質問を投げかけるだけでも有効だと。

日小田:1つ面白い事例を紹介しましょう。コンサルティング先のある会社の会議に参加して、「上司が部下に質問を何回しているか」について記録したことがあるんですよ。10人のマネージャを対象にしました。興味深いのは、「業績がよいチームのマネージャは会話の7割が質問だった」ということ。逆に業績が悪いチームのマネージャほど、質問ではなく「ああしろ、こうしろ」と指示ばかり飛ばしていました。

——「売れる営業とそうでない営業」の違いみたいですね。

日小田:まさにそうですね。部下から上司に方針を確認するような場面もなく、後で部下に「何の会議だったんですか?」と聞いてもほとんど内容が残っていない。上司は会議でいっぱい指示を出して満足しているんですが、実際は伝わっていないわけです。

——同じようなシチュエーションで、業績がよいチームのマネージャは何を問いかけていたのでしょうか?

日小田:過去をイメージさせる「なぜ?」ではなく、未来をイメージさせる質問をたくさんしていましたね。「なんで売り上げが伸びないの?」ではなく、「どうしたら売り上げを伸ばせるかな?」と聞いている。そんな質問をできる上司がより成果を出していました。会議ではメンバーたちも顧客のことを自分の頭で考え、アウトプットし合うので、具体的な対策が生まれていくんです。

——日々の忙しさと向き合いながら、そうした「できる上司」になっていくためには、まず何をするべきでしょう?

日小田:「メンバーとの会話時間を記録してみる」ことを勧めています。ストップウォッチを用意して、1日の中で、それぞれのメンバーとどれだけ話したかを記録するんです。電話で話した時間ももちろん含めます。そうやって現状を明らかにすると、「全然話していないメンバーがいるな」ということに気付くと思います。まずはそこからですね。

メンバーとの会話は質問をメインにする。質問の中身は、過去ではなく未来をイメージさせるものにする――。こうしたメソッドを踏まえて、松田さんはその前提となる「もう1つの重要なこと」を指摘します。互いのスタンスや価値観を超えて理解し合うためには何が必要なのでしょうか。再び松田さんに伺いました。

「自分自身の心と体」を満たすためには……?

松田さん

——松田さんにもう1つ、伺いたいことがあります。管理職の中には「若い人の気持ちが本当にわからない」と悩んでいる人も多いように思うのです。世の中が急激に変化している中で、世代による価値観の差も大きくなってきています。例えば新卒1〜2年目くらいの若手と接する上では、どんなことが大切だと思いますか?

松田:私は20代や10代の方との接点はほとんどありません。だからこそ距離を近づけなきゃいけないな、と思っています。意識して取り組んでいるのは若い人たちとの間に共通項を作ること。フェイスブックは置いておいてインスタグラムを使おう、とか。そうすると若い人に対して「教えてください」というスタンスで関わることができるんですね。「インスタの使い方教えてよ」と。

会社でも同じ関わり方ができると思います。業務の経験値は上司の方が圧倒的に高いけれど、違う切り口で見れば新入社員の方が圧倒的に勝っているスキルというのもあるでしょう。それをリスペクトし、フラットな関係性で教えてもらったり、共感したりすることが大事なのだと思います。

——「我が社もインスタを効果的に使ってマーケティングしよう」という話になれば、若手の方が圧倒的にノウハウを持っていそうですね。

松田:同時に、100人いれば100通りある価値観の違いを知ることも大切です。僕たちが企画する新入社員対象の研修では、「どのように叱ってほしいか」「どのように指示を出してほしいか」「言われてうれしい言葉は何か」「絶対に言われたくない言葉は何か」などを聞き、みんなでシェアしてもらうというコンテンツも行っています。もちろんそこには直属の上司もいる。この場があることで「彼/彼女はこう接してほしいんだな」ということがわかり、メンバーのカルテができるわけです。

——「自分をどう扱ってほしいか」をアウトプットしてもらうのですね。こうした質問に、新入社員はすらすら答えられるものなのでしょうか?

松田:もちろん自分自身に深く問いかけ、新しい気づきを得てもらう必要があります。これは入社して間もない頃の、一切会社の刷り込みがない新入社員の状態だからこそ有効なんです。部署が変わって新しいチームができたときなどもやりやすいでしょうね。これは同時に、部下と上司の間によい関係性をもたらすことにもつながります。好きな人に頼まれれば引き受けることでも、嫌いな人からは引き受けたくないと思うのが人間ですから。質問も同じです。よい質問でも、「嫌いな人からされると嫌」なんですよ。

——たしかに、嫌いでしょうがない上司からよい質問をされても、前向きに回答したいとは思えないですね(笑)。

松田:なので、研修でも質問力のことをレクチャーするのは実は後半なんですよ。その前に関係性作りの方法を学んでいただきます。相手を認める、ほめてあげる、コミュニケーションの回数を重ねる。そうしないと、どんなによい質問をしても効果がないんです。

——部下をはじめ、周囲の人とよい関係性を築いていく。当たり前のことのようにも思いますが、よい上司になるためには何よりも大切なことなのですね。

松田:僕は研修のときに「シャンパンタワーの法則」という考え方を紹介しています。いちばん上の段を自分自身、2段目を家族、3段目を会社の仲間、4段目をお客さまと見立てます。日本の会社員はたいてい、「顧客満足度」を理由に4段目からグラスを満たそうとするんですよ。

「顧客満足度と同じくらい従業員満足度も大切だよね」と考える、ちょっといけている会社の社員は、3段目も満たします。さらに2段目である家族を大切にできるか、そして最上段にある自分自身を大切にできるか。それを考えていくことが重要なのだと思います。自分自身の心と体が満たされている方が、よいマネジメントができるはず。

逆に言うと、自分や家族を大切にできない人がメンバーを大切にできるわけがないんです。でも日々忙しく過ごしている中でそれを忘れてしまう。だから僕たちは、「自分の心と体を満たすためには何が必要ですか?」という質問をします。この質問の答えを、ぜひじっくり考えてみていただきたいと思います。

——とても参考になりました。今日はありがとうございました!

文:多田 慎介

この記事をシェア twitterfacebookこのエントリーをはてなブックマークに>追加

新着記事