トップページ 成長するために必要なこと 自社の強みを言語化し、世の中へ思いを発信できる。デジタルマーケ全盛の時代に「展示会営業」が注目される理由

成長するために必要なこと

2018年07月13日

自社の強みを言語化し、世の中へ思いを発信できる。デジタルマーケ全盛の時代に「展示会営業」が注目される理由

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昨今、セールスやマーケティングの現場で「展示会」を活用した営業手法が注目を集めています。業界・業種を問わず、さまざまな領域で開催されている展示会。デジタルマーケティング全盛の時代にあって、ある種の古典的な手法とも言えるリアルマーケティングの価値が見直されつつあると言えるでしょう。

「展示会には、リアルの圧倒的な強みがあります」

そう語るのは、数多くの中小企業にノウハウを伝え続ける株式会社ピュア・コンサルティング代表取締役で展示会営業®コンサルタントの清永健一さん。果てしないWebの効果検証に悩まされなくてもいい。かといって、昔ながらの人海戦術的な営業に頼るわけでもない。今だからこそ見直したい展示会の魅力をうかがいました。

清永 健一(きよなが けんいち)

展示会営業®コンサルタント 中小企業診断士
株式会社ピュア・コンサルティング代表取締役社長
展示会を活用した独自の手法により、顧客獲得のノウハウを伝える専門家。志師塾の統括講師も務める。神戸大学経営学部卒業後、リクルート映像、放送通信会社と一貫して営業職に従事する。当初、まったく売れない営業担当者だったが、偶然、展示会営業を行ったことをきっかけに開花し、7年連続トップとなる。
メガバンク系コンサルティング会社で展示会営業の手法に磨きをかけた後に入社した営業コンサルティング会社では部長として「ゲーム化」メソッドを開発。1,195社もの企業への営業強化コンサルティングを行い、自著の出版記念セミナーでは述べ1,035名を動員。経営者から「自社の営業を根本から考え直す目から鱗の内容だ!」と圧倒的な支持を受ける。現在は、ゲーム化メソッドを融合し展示会営業の手法を独自に進化させ、営業に悩む経営者や企業を救うべく日々奔走している。展示会は中小企業が自社の想いや志を伝えるのに最適な場だと信じている。著書「展示会営業術」「営業のゲーム化」「仕事のゲーム化」はいずれもAmazon部門1位を記録。

展示会を「やらされ感」で運営しないために必要なこと

——数多くの中小企業の展示会出展をサポートされていますが、企業は何を目標として展示会という場を活用しているのでしょうか?

知名度アップを目標にするのか、見込み客の獲得を目標にするのか。大きく言えばどちらかに分かれます。中小企業にとって、展示会に出る最終的な目的は「売り上げアップ」なのですが、そこに至るプロセスとしてこの2つがあるんです。

——清永さんとしては、どちらの方法を勧めているのですか?

どちらが正解というわけではないと思いますが、あえて勧めるなら見込み客の獲得ですね。なぜなら、知名度アップというのは結局のところ、その展示会によってもたらされた効果なのかどうか検証しきれないからです。これは分からないですよね。もし本気で検証しようと思うなら、展示会に出ること自体よりも何百倍もの金がかかる。「大手代理店にリサーチをお願いしよう」といった話になってしまうので。そうした意味では、分からないものを目標にしても意味がないんじゃないかな、と考えています。

——「見込み客の獲得」そのものは多くの企業ですでにKPIとして置いていると思うのですが、展示会出展における目標設定はこれとは異なるものなのでしょうか?

そうですね。私は実際にさまざまな企業と接してきて、見込み客獲得に関する目標設定が曖昧になっているところが多いと感じています。よくあるのが「名刺の獲得枚数」というケース。

——営業部門の新人によく課される目標ですね。

その目標設定というのが、ある意味適当なんですよね。「昨年は300枚だったから今年は330枚だ!」といった具合で。これでは意味がないと思います。それこそ名刺をもらうだけなら簡単ですよ。対応が上手くて人当りのよいスタッフを置いて、ミネラルウォーターなどの粗品を配りながら名刺交換をお願いすれば、いくらでも集まるかもしれない。でもその名刺は見込み客だと言えるでしょうか? 「ただ名刺を集めればいい」と考えるのではなく、「最終的に得たい成果から逆算していく」という発想を持つべきです。

——「逆算していく」とは?

たとえば、最終的に得たい成果として「3件受注したい」と考えているとします。この展示会から3件の受注がほしいと。そこに至るまでには、見込み化したものから受注する確率は一定のパーセンテージを想定できるはずなんです。例えば見込み化したものからの受注率が20%であれば、3件の受注に向けては15件の案件が必要となります。さらに、展示会後、面談した人の中からの見込化率が30%なら、「15÷0.3」で50件の面談アポイントが必要。そして、展示会で獲得した名刺からのアポイント取得率が16%だとすれば、「50÷0.16」で313枚の名刺が必要だということになります。これらの数値をすべて目標値として立てておきたいわけです。でも、多くの場合はそうなっていません。

——確かに、ここまで分解して目標値を立てられているケースは少なそうですね。漠然ととりあえず「名刺300枚」と置いて、何となく展示会に出展するような形で取り組んでしまうから、先々しんどくなっていくような……。

「しんどいかどうかさえも、よく分からない」といった感じにさえなってしまうかもしれませんね(笑)。でも、目標値を明確にしさえすれば、それでよいかというとそうではありません。目標値を明確にすることによる弊害もあるんです。それは、目標値が展示会のブースを担当するスタッフのノルマとなってしまうこと。「はいはい、分かりました。やればいいんでしょ、いつものやつね。目標という名のノルマでしょ。名刺300枚、アポ50件、見込化15件、受注3件ね。はいはい。やりますよ。ホントはいやですけど・・・」と。こうしたやらされ仕事になってしまうと本当によくない。

——ブースの雰囲気にも影響が出てしまいそうです。

まさに。展示会では活気のあるブースがある一方で、活気のないブースもあります。やらされ感で動いているブースは活気がなく、魂が抜けたようになってしまっていて、当然成果も出ません。だから私はいつも、目標値を明確にすることとあわせて、「展示会営業をゲーム化するべき」だと言っています。

——くわしく教えてください。

例えば名刺を獲得したら1ポイント。それが社長の名刺ならプラス3ポイントといった形で得点化します。初回アポイントがとれたら5ポイント、見積もり提出に進めば5ポイント、受注が決まれば10ポイントといったように、さまざまな要素をゲーム化して競い合っていく。チーム戦にするのもよいですね。単純に目標値を立てるだけではなく、それを達成するために活気を持たせられるかどうかがポイントなんです。工夫のしどころはたくさんあるんですよ。

コンセプトは「1ブース・1アイテム・1ターゲット」

——こうした目標設定やゲーム化の要素とは別に、展示会に出展して思うようにパフォーマンスが上がらないケースとしてはどのようなものがあるのでしょうか?

意外に思われるかもしれませんが、よく見られるのは「出展コンセプトが固まっていないこと」です。そのブースは誰の、どんな悩みを解決する場所なのか。これが明確になっていないケースが案外多いんですよ。他のことをいろいろと頑張っても、コンセプトがぶれていると「よくわからないブース」で終わってしまう。ただひたすら商品を並べて「○○展示会」といった名前でスタートするのもよくないですね。

——コンセプトは何なのか、それをどのように表現するのかを考えなければいけないということですね。ブースの看板に想定ターゲットに向けたキャッチコピーを掲げるようなイメージでしょうか。

おっしゃる通りです。「ブースキャッチコピー」は非常に重要ですね。来場者はまず、ブースの上段にある看板を見ます。最もよく見られる場所には、多くの場合「株式会社清永産業」といった形で社名が書かれているんですよ。でもその社名に興味がありますか? 誰でも知っている大企業なら別ですが、そうでないなら、社名を掲げるだけで興味を引くことはできませんね。ここを変えるだけでも大きな成果が出ます。誰に来てほしいブースなのか、その人にどんなメリットを提供できるのか、またはその人がこのブースに来ないとどんなデメリットがあるのか。そうした要素を端的に表現する必要があります。

——広告の世界と近いですね。

本質はほとんど同じだと思っています。違いがあるとすれば、「展示会はお洒落にしなくてもいい」ということくらいでしょうか。広告の場合はかっこよく見せなければいけない場面もあると思いますが、展示会の場合はベタな方が良いんです。来場者が何も意識せずに、ある意味ぼーっとしながら歩いているときに、分かりやすく伝わるシンプルで力強いキャッチコピーになっているかどうかということですね。

——こうしたコピーを掲げるためには、まさに先ほどおっしゃった「出展コンセプト」を固める必要がありますね。これはどのように考えていくべきなのでしょうか。

大切なのはまず、「自分たちが出会いたい人」を決めることです。どのような業種の、どんな役職の人なのか。その上で、ターゲットが日頃心の中でつぶやいているであろう悩みを考えてみます。ここで大切なのは「自社の商材で悩みを解決できるか」ということは一切考えないこと。悩みを解決できそうな商品を通してターゲットを見ると、発想がどんどん「売り込み」になっていってしまうんですよ。

——まずは相手そのものになったつもりで、悩みをイメージしてみると。

はい。1つ例を挙げましょう。新たに介護施設へ営業したいと考えていた清掃会社のケースです。そこで介護施設の経営者や施設長が訪れる展示会への出展を計画しました。実はここはすごい会社で、アメリカで認定を受けるカーペット清掃の特殊な資格を持つスタッフを3名擁しているんです。日本で数名しかいないようなレベルの資格です。普通の会社なら「こんなにすごい資格を持っています」とアピールしそうなところですよね。

——はい。

しかしこれでは自社のスペックを説明しているだけで、相手のメリットとしては伝わりません。そこで、介護施設の経営者や施設長が日頃つぶやいていそうな悩みを考えます。いろいろと考えた中に、「ノロウイルスが怖い」という悩みがありました。感染力が強いノロウイルスは、介護施設にとって大きな脅威です。ここに訴えかけることにしました。100%の解決はできないとしても、ノロウイルスが発生しにくくなるように清潔な空気環境を保つ定期清掃を提案できる。ブースキャッチコピーは「介護施設経営者、施設長必見。ノロウイルスは怖いです」。自社の社名も商品名も出さずに、日頃の悩みに対してダイレクトに訴えかけたわけです。

——なるほど。こうしたインパクトのあるアウトプットができずに失敗してしまうケースが多いということですね。

そうですね。典型的なのは何でもかんでもやろうとして失敗してしまうケースです。今の清掃会社の例でも、「介護施設もいいけど飲食店もあるし、ビルメンテナンスの需要もあるし……」と欲張って、ターゲットを絞りきらずに出展してしまうと、結局は何のブースなのかよく分からないということになってしまいます。同じ理由で、商品をたくさん並べるのもやめたほうがいいですね。私は、「出展コンセプトを作るときには1ブース・1アイテム・1ターゲットがベスト」だと伝えています。

Webでは伝えきれない「リアルの圧倒的な強み」がある

——「ブースは盛況なのに受注に結びつかない」と悩む担当者も多いようです。展示会後、有効なアポイントを獲得するためには何が必要なのでしょうか。

「相手が喜んで会いたくなるようにする」ことがポイントだと思います。先ほどの清掃会社の例では、ノロウイルスの危険度を診断する点検サービスを用意しました。介護施設を訪問してトイレなどの水回りや人が集まる場所を調べるというサービスで、通常は3万円かかります。これを、ブースでお会いした方には30施設限定で無料提供すると。

——なるほど。これはプレミア感が出ますね。

点検そのものは通常の営業活動として普通にやることなので、工数的にも無駄がありません。こうして30施設のアポイントを取り付け、点検後に成約へ至るという流れです。相手から「来てください」と望まれて訪問するアポイントなので、もし仮に出展社側が約束を忘れていようものなら見込み客である来場者から連絡が来る。それくらい確度の高い商談となるわけです。

——こうした一連の手法を取るにあたって、予算上のネックはないのでしょうか?

今のケースではほとんどお金はかかっていません。展示会は、お金がなくても知恵があれば勝てる。ここが面白いところなんですよ。ブース作りをこだわり始めればキリがありませんが、タペストリーや布といった身近な素材に有効なキャッチコピーを掲げるだけで、大きな効果を発揮しますからね。

——お話を聞けば聞くほどメリットが多いように感じますが、逆に「展示会に出展しないほうがいい企業」もありますか?

結局のところ、展示会というのは「見込み客との新たな出会いの場」に他なりません。展示会に出展しなくても見込み客と出会えるよい方法を持っているなら、無理に活用しなくてもいいでしょうね。例えばBtoCビジネスで、Webを使って見込み客を集める方法があるのなら、展示会に出る予算をWebに投下したほうが効果的でしょう。ただBtoBの中小企業では、Webの集客に限界があるところも多い。そうしたケースでは展示会を活用したほうがいいと思います。

——おっしゃる通り、Webマーケティングのノウハウも世の中に定着しつつあります。デジタルな手法と、展示会の手法との違いはどこにあると思いますか?

展示会はその場に人と人がいて、生身の人間同士で対話ができるというリアルの圧倒的な強みがあります。触ったり、体を動かしたり、体験したり。そうやって自社のアピールポイントを伝えられるのは展示会の揺るぎない強みでしょう。

——有形の商品・サービスはもちろん、無形の商品・サービスを扱う会社にとっては特に有効な手段なのかもしれませんね。

そうですね。「技術」そのものを伝えたいときにも有効だと思います。これも一例で、顧客に合わせてオーダーメイドで刃物を作っている企業があります。刃物を作る技術そのものが商品なんです。ここで「どんな刃物でも作れます」と伝えてしまうと、相手にとってはよく分からない。そこで、「切れ味鋭く、耐久性に優れる」という技術を伝えるために、この会社の刃物と一般の刃物を置いて、じゃがいもを上から落とすというパフォーマンスを行いました。もう本当に小気味よく「シュパン!」と切れるんです。

——その技術によって提供できる価値を実演してみせるわけですね。

はい。こうやって視覚的に理解してもらうことが大切です。現物が目に見えない無形商材だからこそ、メリットを視覚化するということですね。

——これから展示会を活用したいと考えている企業も多いと思います。清永さんからぜひ、メッセージをいただけますでしょうか。

お伝えしたように、展示会というものは出展コンセプトをきちんと固めた上で、1つ1つのポイントを押さえていけば、必ず成果を出せるんです。ぜひ展示会を活用して大きな成果につなげてもらいたいと思います。それと、もうひとつお伝えしたいことがあります。ここで言う成果というのは、たいていの場合「売り上げ」をイメージしますよね。

——はい。売り上げをいかに拡大するか、ということが主眼になると思います。

それはもちろん1つの成果なんですが、経営的に見ると、実はそれ以上に大きなリターンを得られるんです。展示会の成功とは、自社の商品・サービスと向き合い、どんな人の悩みを解決できるのかということを考え抜いた結果、「出展コンセプトを作る」というプロセスの中に、そうした棚卸しと言語化の機会が含まれているんですよ。部門横断的なプロジェクトチームをつくって、展示会の準備に取り組むことによって、セクショナリズムの壁がなくなり社内の一体感が高まるという効果も出てきます。そうした機会は、中々ないと思いませんか?

——確かに、Webで発信しても「いかに見てもらうか」という課題が付きまといますし、それが有効に伝わっているかどうかを検証するのも難しいところがあります。

リアルな展示会であれば、自社の発信が世の中にどう受け入れられるかもライブで確認できます。目先の売り上げや、それこそあまり意味のない「獲得名刺の数」などにとらわれていては見えない風景ですね。そうした意味で、私は「展示会は、中小企業が自社の想いや志を世の中に堂々と宣言する最高の場だ、と信じています。

——とても参考になりました。貴重なお話をありがとうございました!

文:多田慎介

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