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成長するために必要なこと

2018年09月03日

広告費がなくてもブランディングはできる! 中小企業にも可能なブランディングの方法とは。

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山口義宏さん
もっと売り上げを伸ばしたい。もっと知名度を向上させたい。それは、多くの中小企業経営者に共通する思いでしょう。とは言え大企業のように多額な予算を投下して広告を打つことはできず、専門知識を持つ人材もいない・・・。中小企業にとって、ブランディングは遠い世界の概念なのでしょうか?

「ブランドという言葉に距離を感じなくてもいい。」

そう語るのは、ブランドとマーケティングを専門とするインサイトフォース株式会社代表の山口義宏さん。世界的な有名企業から従業員100名未満の中小企業まで、数多くのクライアントのブランディング戦略を支援しています。広告展開をすることなくブランドを確立している企業の実例を、著書やツイッターなどを通して数多く紹介。そのエピソードには、中小企業が勝ち上がっていくための心強いヒントがありました。中小企業が行うべきブランディングの心構えとその手法について、お話をうかがいます。

山口 義宏(やまぐちよしひろ)

大手企業グループで戦略コンサルティング事業の事業部長、大手コンサルティング会社でブランドコンサルティングのデリバリー統括、デジタル・マーケティング・エージェンシーで新規事業マネジャを経て、2010年に企業のブランド・マーケティング領域支援に特化した戦略コンサルティング・ファームのインサイトフォース株式会社を設立。ブランド・マーケティング戦略の策定、商品・デザイン・CI・広告施策の支援を主業務とし、自動車・電機・通信・光学機器・エネルギー・化粧品・金融・製薬・飲料・食品・住宅・アパレル・小売り・放送などの企業を対象とした戦略コンサルティングに従事。著書に『デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール』(翔泳社)、『プラットフォーム ブランディング』(SBクリエイティブ)、などがある。

目的のないブランディングはむしろ逆効果

山口義宏さん

――山口さんは大企業だけではなく、数多くの中小企業のコンサルティングも手がけられています。そもそも、中小企業であってもブランディングが必要なのでしょうか?

もちろん必要だと思っています。中小企業こそ、生き残りや成長のために市場競争を高めることが必須です。

ブランディングには、本質的に2つの目的があります。1つは「競争戦略」。マーケットの中で自社が何者であるかを認識してもらい、説明をしなくてもお客さまの頭の中に価値が浮かぶようにすることで、競争力を高めるというものです。この価値とは、例えば「差別化された他にはない機能やサービス」や、「圧倒的な安さ」や、「どこにも負けない速さ」などです。こうしたことが購入時にお客さまの頭の中に浮かびやすい価値があれば、競争力はおのずと高まります。

もう1つは「組織のアイデンティティ形成」。その組織に所属する人は何を目指して生きているのか。ビジョンや理念と呼ばれるものの軸足を作り、社内に浸透させることです。一般的に、インナーブランディングと呼ばれます。

この2つの目的が混在したまま社内で話を進めると、混乱が起こります。明確な目的のないブランディングは、むしろ逆効果になりかねません。

――山口さんはツイッターを有効活用してブランディングのノウハウを発信され、実際に多数のフォロワーを抱えていらっしゃいますが、SNSの活用ではどのようなことが重要でしょうか?

そもそもは10年ほど前に個人の興味としてツイッターを使いはじめました。最初は何も考えずに使っていたのですが、やはりブランディングの話題が反応も多く、自然と「ブランディングについて話す人」という期待値が広がっていったのだと思います。これがまさにブランディングです。いつしか、個人の色を出すよりもブランドコンサルタントのプロフェッショナルとしての見解を発信することが多くなりました。

プライベートに関することはあまりつぶやかないようにしていますが、深夜や週末はちょっとゆるく開放するという勝手なルールはあります(笑)。その中で特に気を付けなければいけないことは、個人的な価値観や好き嫌いをぶつけないこと。そうしたつぶやきは、ビジネスの範囲や可能性を狭めてしまうことにつながりかねません。

ブランド化されない理由の一つは、一貫性のなさにある

山口義宏さん
――ブランド作りに必要なものとはなんでしょうか。
ずばり「一貫性」だと思います。私は、ブランド作りとは体験の「質」と「量」と「頻度」、そして「一貫性」の掛け算だと考えていますが、多くの企業には顧客体験の一貫性が欠けています。商品やサービスも悪くない、場合によっては多額の広告費をかけているのに、なかなかブランドを覚えてもらえない。これは顧客体験の一貫性がないためです。せっかくの体験シーンなのに、毎回ブランドのロゴマークや配色のような識別するための要素がバラバラだと何も伝わりません。

ブランド戦略を考える上では、「意図的な一貫性」を作っていくことが非常に重要です。例えば「プレイステーション」のCMは全て、冒頭に印象的な「ボンッ」という効果音が入っています。長年刷り込まれた結果、その音を聞くと視聴者は「これからプレステのゲームのCMが始まるんだな」と思う。商品・サービスの一貫性だけでなく、プロモーション上でも計算された一貫性によってブランドが出来上がっていく訳です。

企業の大小に関わらず、商品・サービスは悪くないのに苦戦している企業には、こうした一貫性が欠如しているケースが多く見られます。

――そもそも「自社の商品やサービスに競争力があるのか」「そこまでの価値があるのか」と考える経営者も多いようですね。
価値というのは「10か0か」という話ではありません。商品やサービスが少なからずお客さまに選ばれているということは、すでに何かしらの価値があるということです。「期待値」だって立派な価値なんですよ。「どんな価値が期待できるのか」を相手の頭の中に作ることが重要なんです。

よくあるのは、この発想が逆になっているケース。「よい商品・サービスを作ればブランドができる」「ブランドは結果としてついてくるものだから、気にせずによいものを作ろう」と。もちろんそれでよいものができることはありますが、先ほどお伝えした「一貫性」をどのように保つか、という意味では課題があります。

そういう意味では、実は中小企業のほうが一貫性は構築しやすい。なぜならば、大企業の多くは意思決定が合議制になるため、個人の好みで一貫性を保つ方法は難しいからです。しかし、オーナー企業では、社長が戦略を策定していたり、純粋に好みを押し出していたりと、結果的に一貫性が生まれます。中小であるうちにこそ、ブランドの価値を定義し施策に反映させることを考えておくべきでしょう。

「ブランディングには広告が必須」は大きな誤解

山口義宏さん
――中小企業にはリソースの限界もありますし、広告費も大企業のように割くことはできない。その中でブランディングするにはどうしたらいいのでしょうか。

「テレビや新聞に広告を出さないとブランディングができない」というのは、実は大きな誤解です。例えば日本のスターバックスは、ほとんど広告を出していませんよね。私が知る限り唯一の広告は、上場した日に新聞広告を打ったこと。それでもあれだけの認知があり、よいブランドとして想起されている。よい価値を提供し、メッセージの一貫性を守っているからです。

広告の意味は、あくまで素早く多くの人に知ってもらうということ。認知度が50%になるまで10年かかるものが、広告を使うことによって一瞬で知れ渡ることもあります。「時間をお金で買う」という考え方です。

――しかし、リソースの少なさゆえ時間をかけられない中小企業もあると思います。
フットワークという点では中小企業に勝るものはありません。例えば自動車メーカや電機メーカであれば、1つの商品を作るのに莫大な予算と時間がかかり、そのためミスジャッジも許されにくくなるでしょう。一方で、小売業やネットベンチャーなど、初期投資にそこまでのコストがかからない業種は、「とりあえず仕入れてみよう」「とりあえずアプリを作ってみよう」といった感じで動けるはず。考え過ぎるより、まずやってみて、顧客の反応を得る。これは中小企業ならではのメリットです。

自社ブランドの価値を自己認識をすることは、意外に難しいものです。だからこそ、実際のユーザである顧客が選んでくれた理由には、想像以上に大きなヒントがあります。そして、自社を選んでくれなかったユーザの声に耳を傾けることはもっと重要だと言えます。その中にこそ、広告からは得られない、認知度を上げるためのヒントが隠されているはずです。

サービスの市場に見合った知名度さえあれば十分

山口義宏さん
――最後に、ブランディングに苦戦している中小企業へメッセージをお願いします。
「ブランド」という言葉に距離を感じ、ブランド戦略に躊躇(ちゅうちょ)してしまう中小企業は多いと思います。しかし、少なからず現在のお客さまに選ばれていて、会社で働いてくれる従業員がいるということは、何かしらの価値があるということなんです。会社が存続している以上、無価値ということは絶対にない。自分たちが持っている価値を認識し、その価値を信じて磨き上げ、一貫性をもって発信していけば、中小企業であってもブランディングに成功するはずです。

ブランディングと言っても、提供するサービスの規模に必要な認知や想起があればそれで十分なわけです。日本全体に知ってもらう必要はありません。そう考えれば、ブランディングという言葉の垣根も少し低く感じられるのではないでしょうか。

文:多田慎介

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