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成長するために必要なこと

2018年10月09日

「社員が育つかどうかはリーダー次第なんです」――経営者がいま知っておくべき若手の育て方とは

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小宮 一慶さん
流行や志向の移り変わりが激しく、ビジネスにおける不確実性が高いこの時代。その変化に対応するために、企業には社員一人一人が自立して行動できる組織作りが求められており、自社の未来を担う若手社員の育成は、あらゆる企業において喫緊かつ不可避な課題となっています。

しかし、「どうすれば若手社員が伸びるのかわからない」「厳しく指導したら辞めてしまうかもしれない」という悩みを持つリーダーも多いはず。そこで今回は、数々の中小企業経営者を支えてきた経営コンサルタントの小宮 一慶氏に「若手社員の育て方」というテーマでお話をうかがいました。

小宮 一慶(こみや かずよし)

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役会長CEO。
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現セントケア)を経て独立。企業規模や業種を超えた「経営の原理原則」をもとに、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年100回以上講演を行う。「ビジネスマンのための『発見力』養成講座」(ディスカヴァー21)など著書は130冊を超え、経済紙などでも連載を担当。名古屋大学客員教授。

若手社員に働く喜びを与える「いい仕事」とは

小宮 一慶さん

――若手社員や新入社員を育成する際に、まずすべきことは何でしょうか?

これは必ずしも若手社員に限られた話ではありませんが、具体的なスキルを教える前に、まず働く喜びを感じてもらうことが重要です。働く喜びを知ることで、自発的に仕事に取り組むようになり、結果的に社員の成長につながります。そして、働く喜びを知るためには、「いい仕事」に専念してもらうことが重要になります。

――「いい仕事」とは、具体的にどんな仕事でしょうか?

僕は「いい仕事」を3つの要素で定義しています。まず、お客さまが喜ぶこと。次に一緒に働く周りの仲間が喜ぶこと。最後に、工夫があること。この3つを仕事の中で経験できれば、自然に働く喜びを感じてもらえると思います。

「いい仕事」を実感してもらうために、僕は目標シートを取り入れることを勧めています。毎月、その月に取り組む「いい仕事」の具体的な内容を若手社員それぞれに決めてもらって、シートに記入する。そしてそのシートをもとに上司が評価する。そうすることで社員のモチベーションは上がりますし、社員自身が「いい仕事」をできているか見直す習慣づけもできます。ある企業では、目標シートを導入したことで「仕事が楽しい」と発言する若手社員が増えて、離職率がほとんどゼロになったそうです。

まだまだ多くの企業が「利益を出せ」「目標を達成しろ」と社員にお金を追わせていますよね。しかし、それではいけない。お金を目的に仕事をしても、社員のモチベーションは上がらないんです。下手をすれば社員に「給料分だけ働いたらいいだろう」と思わせてしまいます。

あくまで「いい仕事」をして、その結果としてお金がついてくることを目標にしてもらう。それが社員の働く喜びにつながっていくんです。「給料分だけ働けばいいか」と思っている社員がいる企業と、「仕事が楽しい」と思っている社員がいる企業。どちらのパフォーマンスが高いかは簡単に想像できると思います。

必要なのは、「管理」ではなく「規律」

小宮 一慶さん

――では、そうした意識を浸透させるためには何が必要になるでしょうか?

社員を過度に管理しないことですね。もちろん、製品の質やアウトプットの量は認識しておく必要がありますが、業務のプロセスをいちいち報告させる必要はありません。プロセスを管理し過ぎると、社員が自分で仕事のやり方を考えなくなって、言われたことしかやらない社員が増えてしまいます。

必要なのは管理ではなく、規律なんです。その企業で働く上での行動規範と言ってもいいかな。自社に合った規律を設定して、社員がそれを指針にしつつ自由に働く。それが「働きがい」の創出につながるんじゃないでしょうか。

ここで重要なのは、経営者やリーダーが率先して規律を守ることです。自身が体現できていないと、若手社員から「うちの経営者はお金儲けのために規律を利用している」と思われてしまいます。経営者やリーダーが規律を体現した上で、部下に規律を浸透させることが大事です。

「若手社員に教わる」という視点を持つ

小宮 一慶さん

――若手社員との普段の接し方について悩むリーダーも多いと思います。そうした場合にリーダーが気を付けるべきことはなんでしょうか?

3つあると思います。

まず、コミュニケーションとは「意味」と「意識」の2つの要素を含む、ということを理解しておくこと。例えば、「こういう企画書を作ってほしい」と部下に伝えたとします。これは、相手にやってほしい行為、つまり「意味」を伝えている。しかし、意味を伝えたからといって、相手がその通りに動いてくれるかはわかりません。頭では理解していても、実際に動いてくれるとは限らない。「お金がもらえないから」「この人が苦手だから」「ちょっと忙しいから」など感情的な要素によって、スムーズに行動に移せない場合があります。これが「意味」からこぼれてしまう「意識」の部分です。

若手社員とコミュニケーションを取る際、お互いの「意識」の擦りあわせができていないままやり取りを続けると、誤解を招き、ストレスが生まれてしまいます。なので、リーダーは「意識」の部分、相手のパーソナルな部分に目を向け、日頃から挨拶をしたり一緒にランチをしたりといったコミュニケーションを心がけながら、社員の「個」の側面を知っておく必要があるでしょうね。

次に、「優しさ」を勘違いして教育してはいけないということ。リーダーによっては、若手に厳しく指導をすると辞めてしまうのではと思い、傷つけないよう「優しく」指導をしている場合があります。確かに、指導する際の伝え方も重要ですが、ただ「優しい」だけでは若手社員の成長にはつながりません。本当の「優しさ」は相手を傷つけないようにすることではなく、相手の将来を考えて何が成長のために必要なのかを伝えることです。

最後に、おだてないこと。部下のいいところを「褒める」のはいい。しかし、たいしたことでもないのに「おだてる」と、言われた側は「このクオリティでいいのか」と思ってしまいます。これを繰り返してしまうと、若手社員がやるべき仕事の質が下がり、お客さまにも周囲の仲間にも迷惑がかかります。

――他に、リーダーとしてやってはいけないことはありますか?

相手の欠点ばかりを指摘することは決してやってはいけません。これは、若手社員を育てられないリーダーの多くに共通しています。それでは若手社員の自信を奪ってしまう。褒めることもそうですが、若手社員の強みを知って、その強みを伸ばすことがリーダーの役割です。

そのためにはまず、リーダー自身が謙虚になること。上から目線で若手社員を見ても強みは見つけられません。そうではなく、「若手社員から教わることがあるはず」という視点を持つこと。松下 幸之助氏も、「半分は先輩から教えてもらう、でも半分は部下から教えてもらう」と言っています。

いいリーダーがいなければ、若手社員は育ちません。そのために、まずリーダー自身が「いい仕事」に取り組み、自社で働く喜びを感じていること。さらには、経営者が本気で現場に「いい仕事」をしてもらおうと考え、自社のサービスで社会に貢献できるかどうかを考え抜いているかどうかが重要です。そういう企業には結果的に利益がついてきますし、世の中にも、働く人にも愛されていくんです。

文:木村和博

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