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成長するために必要なこと

2018年10月16日

大幅赤字からのV字回復を実現したアドウェイズを支える「変化に強い組織」とは

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アドウェイズさん
変化が激しいと言われて久しいこの時代。今日うまくいっていることが明日もうまくいくとは限りません。どんな企業であっても、突然厳しい現実を突きつけられるリスクから逃れることはできないはずです。

2001年創業の株式会社アドウェイズは、設立当初からフィーチャーフォン向け広告事業を手がけ業績を拡大し、6年目に東証マザーズへ上場。しかし2007年、勢いに乗って新卒社員の大量採用を決断した矢先に業績が急降下しました。その後、役員報酬の大幅カットと、新しい発想を拒まず重要な仕事でも若手に任せる社風、スマートフォン向け広告に一気に舵(かじ)を切る決断力により短期間での業績回復を成し遂げましたが、その回復の陰には、企業がピンチに立ち向かう上でヒントとなるようないくつかの経験や対策があったようです。

今回は、アドウェイズ創業者で代表取締役の岡村 陽久さん(写真中央)、2007年度新卒入社で現在取締役の山田 翔さん(写真左)、同じく2007年新卒入社で現在上席執行役員の鹿野 晋吾さん(写真右)にインタビュー。同社が業績回復を遂げた背景と、その回復を支えた強い組織力についてお話をうかがいました。

岡村 陽久(おかむら はるひさ)

株式会社アドウェイズ 代表取締役社長。2000年にアドウェイズの前身となるアドウェイズエージェンシーを創業後、2001年2月に大阪で株式会社アドウェイズを設立。2006年、同社が東証マザーズに上場した際、上場企業における最年少の社長(当時26歳)として注目を集めた。

山田 翔(やまだ しょう)

株式会社アドウェイズ 取締役。2007年アドウェイズに入社後、新規メディアの立ち上げを担当。2009年10月、PC向けアフィリエイトサービス「JANet」のプロダクト責任者に就任。その後、スマートフォン向け広告配信サービス「AppDriver」などの新規サービス立ち上げに貢献する。2012年10月に新規事業開発室長に就任後、執行役員、上席執行役員を経て2016年6月より現任。

鹿野 晋吾(かの しんご)

株式会社アドウェイズ 上席執行役員、経営戦略担当。2007年4月にアドウェイズに新卒入社後、PC向けアフィリエイトサービス「JANet」を担当。2010年4月にはインターネット事業部の責任者に就任。広告担当執行役員を経て2016年1月より上席執行役員。2018年4月からは経営戦略も担当している。

巨額の赤字と新卒社員だけが残された「07ショック」

――御社には「07ショック」と呼ばれる経営危機があったそうですが、どのような出来事だったのでしょうか?

岡村:07ショックの「07」とは、2007年のことです。その年、アドウェイズでは国内70名と海外80名、計150名の新卒採用を予定していました。採用人数を決めた当時は業績が絶好調。「このまま進むと人員不足でとんでもないことになる、もっともっと社員を確保しよう」ということで、必要となるであろう社員の数をはじき出し、内定を出したんです。

しかし、いざ彼らが入社する2007年4月になると業績が非常に悪化していて…。売り上げが急減したのに人件費が大きく増えることになって、毎月7,000万円という、とてつもない赤字を出してしまいました。

この状況を打破して業績を回復させるには営業力を強化しなければならないし、そのためには新卒を必死で教育しなければいけない。でも、教育を担うはずの先輩社員は会社の危機を感じて次々に退職してしまって、大きな赤字と、右も左も分からない新卒社員だけが残されてしまった。これが「07ショック」です。

アドウェイズさん
岡村陽久 代表取締役社長

――その危機を乗り越えるために、どのような施策を打ったのでしょうか?

岡村:2008年3月期の黒字を目指し、その「8」と「3」を取って「83タンクロ」と名付けて、社内にポスターを大量に掲示しました。でも、ほかには特に施策というものはなかったです。施策を打とうにも新卒ばかりの会社になってしまいましたから、入社1ヵ月目だろうが2ヵ月目だろうが頼るしかない。あとは彼ら、彼女らが、置かれた状況に耐えてやりきってくれたということでしょうね。

――鹿野さんと山田さんは07新卒で、まさに「07ショック」の当事者だったわけですが、その頃の社内の雰囲気はどうでしたか?

鹿野:入社時点では業績が悪化していることを知りませんでしたが、70人いる国内組新卒のうち20人が、既存の部署ではなく岡村さん直下の新部署に配属されるという話があって、なんとなく「おかしいな」とは思っていたんです。そのうち、日本経済新聞に「アドウェイズが新卒を採用し過ぎている」という記事が出て、それで初めて実情を知りました。

アドウェイズさん
鹿野晋吾 上席執行役員

山田:僕がそもそもアドウェイズへの入社を決めたのは、「新規事業に携われるから」。面接で「新規事業を何でもやらせてあげる」と言われ、70人いる国内新卒の中で自分だけが新規事業に関わることができると思って、すごく期待して入社したんです。

でも、蓋を開けてみると07ショックの真っ只中で、すでに暗雲が立ち込めていた。実際には、デザイナーやエンジニアを含めた10人くらいのチームを任せてもらえたんですが、「83タンクロ」を掲げる中、そのチームも期末には撤退が決まってしまい、本気で会社を辞めようと思いました。

アドウェイズさん
山田翔 取締役

鹿野:ただ、「ここに来てよかったのか?」とみんな動揺しつつも、暗い雰囲気は全くなかったですね。ものすごく自由な社風で、私服OKだし、新卒だからというだけで残業を課せられることはないので帰る時間もとやかく言われないし。普通の会社だったら「新卒のくせに何を生意気なこと言っているんだ」と抑えつけられてしまうようなことも、「それいいね!やってみようか」と言ってくれる空気がありました。

新卒でも思ったことを率直に指摘できた背景には、会社がまだまだ未完成だったこともあります。「こうすればもっと売り上げにつながるのに」とか、「この業務は分けた方がいいんじゃないか」とか、新卒でさえ気づけるレベルの穴があったことが、結果的にその後の業績回復を実現できた理由の一つだったんだと思います。

変化に強い組織に必要な「先見性」「決断力」「柔軟性」

アドウェイズさん

――2007年を境に組織として大きな変化があったわけですが、その変化を経験した立場から見て、「変化に強い組織」とはどういう組織でしょうか?

鹿野:まずは「先見性」がある組織だと思います。これは経営陣だけではなく、社員全員に求められることです。自社の将来を見据える人が多くいた方が、当然ながら選択肢は増えるわけですから。

岡村:うん。100人いても1人しか考える人がいなければ一通りの方法しか試せないけど、100人全員が自分で考え行動すれば、一気に100パターン試せるからね。「いちばんうまくいった方法をみんなで取り入れよう」という舵取りもできるわけだし。

鹿野:新たな選択肢へ舵を向けるためには「決断力」も必要だと思います。うちで言えば、フィーチャーフォンからスマートフォンへとトレンドが変わりつつあった頃、他社が段階的にスマートフォン対応の準備をする中、一気にスマホへシフトしました。

また、そういった新しい分野に臨機応変に対応するだけの「柔軟性」があることも重要だと思います。

山田:僕は、アドウェイズの行動指針が変化への強さを象徴しているように思います。例えば「当たり前を当たり前と思うな」という指針。今あるものがずっと続くわけではないという現実は、特にインターネットの世界においては宿命でもありますよね。トレンドは日々変わるので、今うまくいっているビジネスがいつまでも続くと考える方がおかしいと思っています。

「圧倒的に素早い行動をせよ」という指針もあります。早く決断し早く動くという考え方ですが、これが社員のDNAレベルにまで浸透していれば、圧倒的に変化に強い組織になっていけるんじゃないですかね。

――では、その「変化に強い組織」を作るために重要なことは何でしょうか?

鹿野:僕らは、「メンバーを信頼する」という岡村さんのスタンスに影響を受けて事業に取り組んでいます。事実、信頼されている感覚を持って発言してくれる社員は多いと思いますし、その発言に対して真摯に答えることで自然と言い訳のいらない環境になり、信頼関係も築けるのかなと。

山田:岡村さんは「ちゃんと相手を見て、仕事を託す」ということがとても上手なんです。人に裏切らせないというか。僕は過去に何度も「やめよう」「裏切ろう」と思ったんですけど、結局は裏切れませんでした(笑)。

「利益」ではなく「人」を大切にすることで企業は育つ

――それだけの信頼感を得るために、岡村さんが経営者としてやっていることはありますか?

岡村:「この人のこの能力を使えば絶対にうまくいく」というような適性を見極めることですね。山田で言えば、事業を作る力やビジョンを伝える力、分かりやすく説明する力は見ていて尊敬するし、鹿野の場合はやりきる力が非常に高い。人それぞれ、何かしら自分にはない能力を持っているはずなので、その能力を生かせる仕事を任せることで、信頼関係は自然に生まれていくんだと思います。

アドウェイズさん

僕は、アドウェイズを経営していく上で、「人儲け」という考え方を大切にしているんです。企業は、社員に成長の機会や試練を提供し、本当の意味で社員が成長できる場でなきゃいけない。社員がいつかアドウェイズを辞めて独立や転職をするときには、「アドウェイズのおかげで自分は成長できたんだ」と言ってもらえるような企業でありたいと思っています。

また顧客や社会に対しては、我々が提供するサービスでこれまでできなかったことを可能にし、「アドウェイズのおかげで儲かった」「アドウェイズがあってよかった」と思ってもらえるようにしたい。「お金儲け」よりも「なにこれ すげー こんなのはじめて」と言われるサービスを提供したいんです。

目先の利益ではなく、目の前にいる人を大切にすることで企業は育つ。そういう考え方を「人儲け」という言葉にして呼んでいます。振り返ると、こういった考えを持つ企業だということを採用の時点で伝えていたから、結果的に苦境に立ち向かえる人材が集まったのかもしれません。

――これから変化に強い組織を作っていきたいと考えている経営者は、まず何をすべきでしょうか?

岡村:うちがそうであったように、率直に意見を言ってくれる人を自分の周りに置くことですね。

社長って、本当は変化したくないものだと思うんですよ。僕もそうです。本音では変化なんて起きてほしくない。だって怖いじゃないですか。売り上げの7割がフィーチャーフォンだったのにエンジニアも営業もマネジメントも一気にスマートフォンに対応させたときだって、これがうまくいかなかったらどうしようと本気で怖かったですもん。社長としては当然のことです。

でも、もし社長以外の経営陣から「このままじゃ会社が潰れます」と言われたら、決断せざるを得ない。たとえ一人では思い切れなくても、たとえ耳の痛い話であっても、みんなが言うから決断できるというケースもありますからね。

「やれ」と言われて「はい分かりました!」と素直に動いてくれる幹部は気持ちいいし、かわいい。でもそれでは変化に強くなれないと思います。うちだって、山田なんて全く言うことを聞かないですよ(笑)。「何でやらなきゃいけないんですか」「やる必要がありますか?」「それよりこっちをやった方がいいんじゃないですか」と。でも、そんな幹部を何人周りに置けるか。そこからいろいろな意見が出て、それによって社長にも決断する勇気が出てくるんです。そう考えると、今の僕はとても恵まれているんだと思います。

アドウェイズさん

文:多田慎介

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