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成長するために必要なこと

2018年11月21日

日本人が知らない、ニッチな旅行サービス「Warm Showers」

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プロフィール 中村 洋太BizTERRACEマガジン副編集長
プロライター。旅行情報誌の編集とツアーコンダクターの経験を経て、ライターとして独立。これまでに自転車で西ヨーロッパ一周、アメリカ西海岸縦断、台湾一周達成したほか、東海道五十三次600km 徒歩の旅も。詳細のプロフィールはこちら プロライター。旅行情報誌の編集とツアーコンダクターの経験を経て、ライターとして独立。詳細のプロフィールはこちら

中村さん

前回の対談記事の中で、「旅の価値を、旅行メディアではなく、あえてビジネスメディアで発信していきたい」という話をしました。旅先で得られる知識やインスピレーションには、ビジネスに活かせるヒントが詰まっていると思うからです。

今回ご紹介するのも、まさに旅をしたからこそ出会えたユニークなサービス。日本人がほとんど知らないそのサービスを利用することで、旅のおもしろさが増したのはもちろん、「ユーザどうしの結びつきが強いサービスにおける利益の生み出し方」など、ビジネス観点での気付きもありました。

旅行者が無料で泊まれるサービス。ただし・・・

昨夏、アメリカ西海岸2500km(サンディエゴからポートランドまで)を自転車で縦断しました。旅費が限られていたため、「いかに宿泊費を抑えるか」というのが課題のひとつでした。

日本を旅する際はどこの街にも大抵ビジネスホテルがあって、安価で泊まることができます。しかしアメリカでは同様の宿が少なく、質素な宿に素泊まりするだけでも1万円以上というのが当たり前でした。

何かよい方法はないかとネットを探していたある日、ユニークなサービスを見つけました。それは「Warm Showers」という旅行者のためのサービスで、「泊まりたい」ゲストと「泊めさせてあげる」ホストのマッチングWebサイト。

中村さん

宿泊のマッチングであれば「カウチサーフィン」という、より利用者の多いWebサイトもあるのですが、Warm Showersのユニークな点は、「自転車で旅行する人限定」のサービスであること。

例えば自転車旅している人が、「5日後にサンフランシスコに着きそうなんだけど、一泊させていただけませんか」とホストにメッセージを送り、ホストの都合が合えば泊めてもらえる、そのような仕組みです。

無料で泊まれるサービスなので、実際に使ってみるまでは、「そんなお人好しのホストがいるのだろうか」と疑問に思っていました。

しかしWebサイト上で検索してみると、北米やヨーロッパ、オセアニアなどではどこの街にも十分な数のホストがいて、しかもその多くが自転車旅経験のある方でした(日本では利用者が非常に少なく、都内近郊では主に外国人居住者のユーザが数名いるのみでした)。

「泊まれる」だけが魅力じゃない

実際にアメリカを旅したときも、1ヵ月間で7名の方のお宅に泊めていただけ、宿泊代がかなり節約できました。さらに、寝場所の提供だけではなく、食事を出してくれたり、飲みに連れて行ってくれたりする方までいたのが驚きでした。

特に印象的だったのは、ロサンゼルス郊外のベンチュラ(アウトドアウェア「パタゴニア」本社がある街)でお世話になったジャックさん。少し太ったおじさんでしたが、シャワーを浴びて戻ると、写真を持って待っていました。

中村さん

そこには自転車レースで颯爽と走っている選手の姿が。

「誰ですか?」
「私だよ」
「え!?これジャックさんなの?」
「昔は、プロのロードレーサーだったんだよ。パタゴニアが私のスポンサーだった」

現役生活を終えてからは、2年間かけて世界中を自転車で旅したそうです。これまでに訪れた国は53ヵ国。その多くを自転車で訪ねたそう。だからこそ、Warm Showersを使って世界中からの旅人と話すのが好きなのだと言います。

「日本人を泊めたのは君が初めてだよ。明日は、しばらく君の自転車旅に付いていってもいいかい?」

「もちろん!」

翌朝、次の街へ向かうぼくに、海岸沿いのオススメのサイクリングロードを案内してくれたり、旅のアドバイスを受けながら、1時間ほど同行してくれました。ホテルに泊まっても一人きりですが、Warm Showersを使えば英語の練習になります。本当にありがたいサービスでした。

中村さん

「限定的なサービス」だから良かったこと

また、自転車旅の利用者に限るという、「限定的なサービスだからこそのメリット」を感じる場面もありました。

それは今年6月のこと。ぼくはサッカーのロシアW杯を現地観戦することになり、日本対コロンビアが行われるサランスクのホテルを探していました。しかし、モスクワから約600km離れた地方都市で、観光地でもないためホテルがとても少ない街でした。

Booking.comで調べると、高級ホテル以外は満室。かろうじて空いていたホテルも、「1泊12万円」という信じられない表示が。Airbnbで見つけた質素な部屋さえ1泊4万円前後と、かなり高騰していました。

「駅で野宿しようかな」。半ば諦めていたなかで、ダメ元のアイデアが浮かびました。「こんな地方都市にホストはいないだろう」と思いながらも、試しにWarm Showersで検索してみると、サランスク在住のホストが2人だけいたのです。

「今回は自転車旅ではないのに申し訳ないのだけど、これまで世界各地を自転車で旅してきました。サランスクのホテルがいっぱいで困っていて、どうか一泊だけさせてもらえないでしょうか」

すると、アントンさんという方から返事があり、「うちは無理だけど、友人の家なら大丈夫そうだよ」と別のロシア人を紹介してくれたのです。奇跡的に、野宿をせずに済みました。

中村さん

試合当日はアントンさんにも会い、直接お礼を言うことができました。彼もこれまで多くの国を自転車で旅した男。試合後も仲間を連れてきて、「勝ったね!おめでとう!」とみんなでピザを食べながら日本の勝利を祝ってくれました。

ぼくらは、生まれた国や言葉は違い、異なるバックグラウンドを持っていました。しかし、「自転車旅」という共通の体験があったからこそ、彼は無理なお願いにも親身になって応えてくれたし、実際に会ってもすぐに仲良くなることができました。ニッチな旅行サービスならではのユニークな出来事だったなと感じます。

ジャンルは異なりますが、レシピWebサイトを見ていても、同様のことを感じます。例えばユーザ数が多く総合力のある「クックパッド」に対して、作り置きレシピWebサイト「つくおき」、きのこ専門レシピWebサイト「きのこらぼ」、カレー専門レシピWebサイト「家カレー向上プロジェクト」など、専門性の高いWebサイトがいくつかあります。

これらはテーマを限定するためユーザの数ではクックパッドにおよびませんが、その分サービスに対する愛着度やユーザどうしの結びつきなどが高まり、さらにその専門性が功を奏し、関連商品の物販がしやすくなったりするかもしれません。

実際、「きのこらぼ」ではきのこ商品のレトルト食品や生鮮きのこがオンラインで販売されていますし、「つくおき」では作り置きに使える保存容器の販売につなげています。

Warm ShowersはNPOであり、寄付で成り立っているため利益を出すような仕組みは現在のところありませんが、仮にもし利益を出そうとするならば、例えば自転車旅で使うバッグや便利グッズをWebサイトで販売したり、自転車旅の初心者が旅のプロに相談できる有料会員向けのQ&Aページを設置したりと、さまざまな展開ができるかもしれません。そんなことを、Warm Showersの利用を通して考えさせられました。

文:中村洋太

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