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幸せな会社組織をつくる

2018年12月25日

使いやすく働きたくなる、都市に見立てたオフィスデザイン

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田口 亮さん

いつの時代も、オフィスデザインは企業の文化やビジョンを体現する重要な存在。一方、ネット全盛の現代では、コーポレートWebサイト(企業Webサイト)もまた、会社の「顔」です。そこで、オフィスデザインとWebサイトデザイン、どちらも素敵な会社を訪ね、その魅力のエッセンスを探るのが本連載。

第1回は、JAL、TOYOTAなど有名企業のWeb制作や、多様なデジタルコンテンツ&サービスを開発する株式会社フォーデジットです。昨年移転した新オフィスと、今春リニューアルした自社Webサイトについて、代表取締役の田口亮さんにお話を伺いました。

田口 亮(たぐち りょう)

株式会社フォーデジット代表取締役。1977年生まれ。ミュージシャン、フリーのWebデザイナーを経て、創業期のフォーデジットに参画。その後、多数のプロジェクトを手がけ初期の成長を支える。その後は経営に参画し子会社代表、Webサービスであるクリエイティブサーベイを立ち上げ事業化、フォーデジット代表となる。人間中心設計専門家。

【今回の訪問先】
株式会社フォーデジット
業種:Webサイト、デジタルサービスなどの開発/運用
所在地:東京都港区赤坂
最寄り駅:青山一丁目駅(徒歩1分)
物件:8階建オフィスビルの2、3階
広さ:145.61坪(2階)+145.47坪(3階)
Webサイト:www.4digit.jp

|オフィス編
合併統合を機に目指した、会社が「ひとつのチーム」になるオフィス

――御社のオフィスデザインのコンセプトは?
田口 このオフィスのコンセプトは「4 DIGIT CITY」です。昨年7月にここへ転居した際、オフィスを都市に見立て、その都市体験をデザインするようなオフィスを目指しました。

デザインのポイントは3つあり、

①個と和を結ぶ価値観
②境界をどう溶かすか
③新結合の装置をどう置くか

その背景にあったのは、弊社の組織改編でした。今年7月、完全子会社だった「フォーデジットデザイン」「フォーデジットエステートソリューション」「イーサグラム」の3社を合併統合したんです。

3社はそれぞれ、企業やブランドWebサイトの構築、新築マンション販売Webサイトや関連アプリケーション制作、そして企業Webサイトやそのコンテンツの運用を得意としてきました。もともとは弊社の有力事業を、独立した組織で戦えるくらいの力をつけようと考えて分社化した経緯があります。それがいずれも成果を上げ、各社の仕事のスケールが大きくなってきたことで、再統合して総合力を上げる道を選びました。

ただ、グループとはいえ企業文化も多少違いますし、各社数十名はいたので、知らない同僚が急に増えるのは大きな変化です。もともと相互協力はあったものの、統合後120名以上となる社員がひとつのチームになるには、オフィスデザインの力も重要ではないか、と考えたんです。これが、先述のコンセプトと3つのポイントにつながりました。

――そのためにオフィスデザインに取り入れた工夫は?
田口 ひとつは、フロアを斜めに貫く通路。床から45cmほど高くした、ウッドデッキのような通路を新設しました。「Root 4D」という愛称をつけましたが、ファッションショーでモデルたちが行き交う舞台みたいなので「ランウェイ」と呼ぶ社員もいます(笑)。

田口 亮さん
オフィスを横切る通路「Root 4D」

これはオフィスを都市のようにとらえるコンセプトとも重なります。用途や利用者の異なる複数のエリアをつなぐ道であると同時に、日々そこを通る度、少し高い目線から会社の活動全体を自然と感じられる装置でもある。

部署の違いをこえて気軽に声をかけ合いやすくなったと感じます。僕自身、このオフィスで一番好きな場所で、時々、用もないのにウロウロしています(笑)。なお、オフィスは2、3階の2フロアで、どちらにもこの通路を用意しました。2つの「Root 4D」は、実は非常階段でつながってもいます。

もうひとつわかりやすい特長は、2フロアのうち、ビジターも迎え入れる2Fのデザインです。仕切りがほぼないオープンな空間に、複数のワーキングスペースやライブラリ(共有書棚)、連動する3台の大型モニタや、バーカウンターなどがあります。

今は統合直後の混乱を避ける意味でも各社員に固定の席を割り振っていますが、フリーアドレス的な使い方も想定してデザインされています。

田口 亮さん
2階コミュニティスペース

オープンスペース全体を、対外的な発表会や社内イベントにも活用できます。昨年の忘年会では180人ほどの社員が共にひとときを過ごしました。ちなみにバーは普段も使えて、「お酒は今日の仕事を終えてから」というゆるやかなルールで共有しています。

田口 亮さん
2階コミュニティスペースの奥にあるバーカウンター

社外のプロと自社のデザイナーが共創したオフィス

田口 亮さん

――このオフィスの実現に至るストーリーがあれば、ぜひお願いします。

田口 弊社は18年前に横浜で設立後、東京・外苑前のマンションの一室に移転しました。そこから徐々に成長を遂げ表参道、渋谷と移転。耐震工事で要退出となったのを機に、今の場所にやってきました。3社の統合はすでに決まっていたので、前述のような課題に応えるオフィスデザインを一緒に考えてくれそうなデザイン会社に、いくつか相談しました。具体的には、統合の背景と、前述3ポイントを説明したRFP(提案依頼書)を用意し、課題に対してどうアプローチするかをご提案いただきました。

僕らがまず期待したのは、綺麗な3DCGのプランを出してもらうことよりも、デザインの本質に関わるコンセプトやアプローチでした。これに応えてくれたのが今回ご協力頂いたドラフト社さんで、前述の「4DIGIT CITY」につながるキーワードをいただきました。そこで彼らと一緒に、弊社からはアートディレクターとプロジェクトマネージャ、そして予算管理者らが集まったチームで、新オフィスのデザイン計画にあたりました。それぞれの職能が活かせる人選だったと感じます。

――社外と社内、それぞれに向けて、このオフィスデザインを通じて何を発信したいですか?

田口 僕らは自社のことを、「進化するデジタルの世界の中で、コンサルティングからものづくりまで並走するデザイン会社」と考えています。なのでオフィスデザインもただ奇抜になるより、比較的ニュートラルで落ち着いた印象になっています。社内へのメッセージとしては、最初のご質問への答えがそれに当たるかと思います。

付け加えるなら、普段からユーザ体験を重視した開発をしていることもあり、移転時には全社員向けに「新オフィスの使い方ガイド」を配布しました。これはお話してきたようなコンセプトと新しい働き方を、創造的な仕事に関わる社員全員で共有したいという思いで作成したものです。

田口 亮さん
社員に配布するための「新オフィスの使い方ガイド」

|Webサイト編
変化の激しい仕事だからこそ「コンテンツと事例をシンプルに語る」

――御社のWebサイトのコンセプトは?

田口 まずひとつには、自分たちのつくった成果物を紹介するだけでなく、その背景にあるものを伝えること。ふたつ目は、シンプルにコンテンツと事例を見せるということです。

田口 亮さん
株式会社フォーデジット Webサイト

――そのために取り入れている工夫があれば教えてください。

田口 このWebサイトは主幹事業ごとの説明と、その実績を「ケーススタディ」という形で紹介しています。頂いたお仕事に対し、我々が見出した洞察と課題、そして対策と結果を簡潔に示す。デジタル技術を扱う仕事柄、専門技術の細部を語ろうと思えばいろいろ紹介できますが、最新技術をいちはやく取り入れること自体は、必ずしも本質ではありません。そのWebサイトやデジタルサービスで何を達成しようとし、どんな結果になったのか。そこに重きを置いています。

――自社Webサイトデザイン計画はどのように進めたのでしょう?

ふだん僕らがクライアントのWebサイトを構築するとき同様、自社Webサイトでも「プロジェクト計画表」をつくることから始めました。これはプロジェクト概要、目指すべきゴール、ターゲット、スコープ、品質管理計画などからなります。

田口 亮さん
自社Webサイト制作で実際に作成したコンテンツ設計図

そこからワイヤーフレーム設計(Webサイト全体の間取り図)、情報設計、テキストライティングに進みますが、今回この部分はほぼ僕が自分でやりました。皆が忙しかったのも理由ですが(笑)、今回は多事業の統合もあったので、領域横断的、俯瞰的な視点が必要です。なので、情報を整理する部分は自分が一人でやることの利点もあると考えました。

ただ、正直に言えばふだんクライアントのために手がける仕事に比べ、かなりの突貫工事だった点は否めません。今後、さらなるリニューアルを考えています。コンテンツのアップデートや事業内容の分かりやすさ、問いあわせ導線の設計と、インフラの変更、CMSの追加など機能的にも良くしていこうと考えています。表現自体はあまり変わらないかもしれませんが、事例の中身や見えないところでのクオリティを変えていくつもりです。

|オフィスとWebサイトの関係
人材を引き寄せるオフィス、企業ブランドを伝えるWebサイト

田口 亮さん

――最後に、御社にとってのオフィスとWebサイト、双方の関係性をどう考えていますか?

田口 近年、企業にとってのオフィスデザインは特に人材採用において大きなファクターになっていると感じます。初見で「ここで働きたいかどうか」を判断する大きな材料になっているということですね。これは、オフィスデザインがその企業の社風や働き方を反映することとも関係があるのでしょう。その意味で、社内に向けたオフィスデザインの価値ともつながっていると言えますね。

他方でWebサイトは、まだその会社を知らない人に具体的な「情報」や、それらを通じた定性的な「印象」を与えるもの。こう考えるとオフィスとWebサイトの役割には、異なる部分も、重なる部分もありますね。だからこそ、オフィスとWebサイトでデザインガバナンスの統一を図りつつ、それぞれに会社の価値を高める働きを期待したいと考えています。

企画:大崎安芸路(ロースター)/取材・文:内田伸一/写真:栗原大輔(ロースター)

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