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起業直後

2019年02月05日

「レンタルCFO」に聞く、スタートアップ資金調達の極意

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鈴木さん中道さん

起業時における資金調達は、全てのベンチャーにおいて避けては通れない問題です。やりたい事業、斬新なアイデア、ほかにはないスキルがあっても、原資なくプロジェクトを実現させることは限りなく不可能に近いでしょう。

群雄割拠するIT系ベンチャーの資金調達においては、株式を利用し資金調達する、いわゆる「エクイティファイナンス」が主流となっていますが、その他にも、銀行などからの借り入れによる「デットファイナンス」や助成金や補助金など公的支援の活用など、資金調達にはいくつかの道があります。「レンタルCFO」として数々のスタートアップの資金調達支援事業を展開する株式会社リンクスの代表取締役、鈴木吾朗さんは、事業の領域やフェーズなどによって、「ハマる」調達方法は変わってくると言います。

鈴木さんは、これまでの支援の中でデット、エクイティ両方の活用事例を経験し、多くのベンチャーをサポートしてきました。その鈴木さんに、デット、エクイティそれぞれのメリットや指向性、より効果的な活用法などについて、ビズテラスプロジェクトメンバーの中道大輔が話を聞きました。

鈴木 吾朗(すずき ごろう)

大学卒業後、三菱重工業株式会社 名古屋航空宇宙システム製作所に勤務し、主に管理会計に従事。その後gumiほか複数ベンチャーのCFOとして参画し、約10億円の資金調達をクローズしつつ、創業期の総務、経理、経営企画全般を管掌する。2015年3月リンクス創業後、ママスクエア、SOINNなど有力ベンチャーの「レンタルCFO」としてVC、金融機関との交渉を行い、独立後4年弱にして約40億円の資金調達支援に携わる。

プロフィール 中道 大輔BizTERRACEメンバー
ソフトバンク株式会社法人マーケティング本部 新規事業戦略室。Yahoo! JAPANや、ベンチャーを経て、ソフトバンクにジョイン。新規事業の立ち上げを専門とし、本業・兼業問わず多くのプロジェクトに参画。twitterはこちら ソフトバンク株式会社法人マーケティング本部 新規事業戦略室。新規事業の立ち上げが専門。twitterはこちら

ベンチャーの資金調達を俯瞰的にサポートする「レンタルCFO」

中道 鈴木さんは「レンタルCFO」という肩書きで活動されていますけど、そういう方はほかにもいらっしゃるんですか?

鈴木 「レンタルCFO」はうちが商標を取っている名称なのでほかにはいないですが、少なくとも私のような経歴でこうした業務をしている人はあまりいないと思います。

中道 確か鈴木さんは、ファイナンス系じゃない仕事で社会人デビューしたんですよね?

鈴木 はい。三菱重工の「名古屋航空宇宙システム製作所」というところに事務方として入ったのがスタートです。ちょうどMRJという国産ジェット機の製造計画が立ち上がった時期で、その原価計算や計画の部分を担当していました。

大きな仕事は魅力的でしたし、そこに携わることにやりがいも感じていたんですけど、いろいろ経験していくうち、一事務方が大企業の中でやれることには限界があるということに気づいたんです。一方、自分としては、ある程度の意思決定ができる立ち位置で働きたいという想いがありました。ちょうどそんな時期にベンチャー企業から財務のマネージャ職のようなスタンスでお誘いをいただいたので、思い切って自分のやりたいことをやってみようと思ったんです。

中道 その仕事を経て、ソーシャルゲームのベンチャーだったgumiの初代CFOになられたわけですね?

鈴木 はい。CFO支援という今の自分の立ち位置において、一番ベースになっているのはgumiでの経験ですね。当時のgumiは、携帯SNSの自社開発からSAP事業に大きく転換したタイミングで、10人ほどの社員数が半年で120人になるようなフェーズでした。今後はこんなふうに飛躍的に成長するスタートアップがどんどん増えるだろうという実感を持ちつつ、そのフェーズのスタートアップにおいては、特に財務系のスキルを持っている人材が絶対に必要になるだろうと思ったんです。それならば、「レンタルCFO」という概念でベンチャーの資金調達面を俯瞰的にサポートしていけば、いろんな会社の立ち上げに貢献できるんじゃないかと。それが始まりでした。

中道 gumiの場合は、具体的にはどこから資金調達をしたんですか?

鈴木 まずは運転資金として保証協会付で2,000万円の融資を確保した後、エクイティファイナンスを含む数億円を調達したという流れですね。その後も、まだ業績が不安定な時期だったので、手元資金の目減りに備えて救済のエクイティファイナンスに駆けまわったり、売掛金を前倒して払ってもらえるよう交渉したりしていました。

デットファイナンスの制度を知らない人は意外に多い

鈴木さん

中道 すると、鈴木さんはデットとエクイティの両方を駆使したわけですね。でも、エクイティファイナンスに関しては関連の本がいろいろあったりして学ぶ機会も多いと思うんですけど、デットファイナンスの方は僕も正直よくわからないんです。デットのメリットやデメリットをぜひ教えていただきたいんですが。

鈴木 デットファイナンスでもエクイティファイナンスでも、あるいは補助金でも、基本的には目的となる資金使途があって、そこをいつまでに、どうやって調達するかということには変わりないですよね。まとまったお金があれば、そのぶん成長のスピードが速まるわけなので、そこを切り分けてもあまり意味がないと思っています。

ただ、確かに私の周りのシリアルアントレプレナーさん達も、起業を重ねる中で失敗も経験し、知見がたまっているはずなのに、デットに関してはそんなに利用せずにやってきた方が多いので、わからない方が多いのも納得できます。そういう方には、デットのおもしろい制度を説明したりしています。

中道 具体的にはどういうものですか?

鈴木 昔からあるのは、保証協会付の金融機関さんをフロントに立てて都道府県や市区町村が資金を貸し付ける「制度融資」と言われるものや、日本政策金融公庫の創業融資などですね。それから、年齢や性別の縛りはあるんですが、東京都の場合だと産業労働局が元締めをやっている「女性・若者・シニア創業サポート事業」というもの。男性なら39歳以下または55歳以上、女性なら年齢を問わず使えます。これだと融資限度額いっぱいで1,500万円まで借りられます。あとは、保証協会付きではないプロパー融資などもありますね。

中道 プロパー融資?

鈴木 はい。貸す側の審査を保証協会ではなく銀行が直接行う融資です。これは銀行とある程度のコネクションがないと難しかったり、審査も厳しかったりしますけど、世の中に役立つようなビジネスモデル、例えば障害者とかシニアとか子育て世代に役立つ切り口のビジネスに対しては間口が広いですね。ソーシャルビジネスに使えるものとしては、西武信用金庫と日本財団がやっている「CHANGE」という制度融資もあります。

シード期には確度の高いデットファイナンスを狙うべき

中道さん

中道 僕が支援しているスタートアップでも、デットを使っているという話はほとんど聞かないんですよね。例えばシード期のタイミングだと、どれくらいのデットが調達できますか?

鈴木 資本金にもよりますけど、私の場合はだいたい1,000万円から2,000万円ぐらいを目指して調達しましょうとアドバイスしていますね。

中道 仮にシード期のタイミングでVCに突然ドアノックすると、どうなりますか?

鈴木 お眼鏡にかなうまでに相当時間がかかるでしょうね。ある程度プロダクトが案件化するまでは調達できないということもあると思います。となると、もしその間に資金が尽きてしまったらどうするのか、という心配が生まれますよね。

1年に設立される株式会社が10万弱ある中、VCから支援を受けられるのはおよそ1,000社くらいです。その確率で調達を狙うよりも、融資の方がぜんぜん確度が高いんですよね。だから、まずはデットである程度の手元資金を作っておいて、それで自分のプロダクトをある程度作り、検証をして、そこからVCや個人投資家をあたるべきだと私は思います。

中道 デットにリスクがあるとすると、どんなところですか?

鈴木 デットの場合は元本を返さなきゃいけないので、期間とか金利の部分もちゃんと見極めないといけませんね。例えば、7ヵ月後には売り上げが立ち始めて回収の原資ができてきますよ、みたいな。そういう計画でなければ貸す側も納得してくれないですし。トラフィックじゃなくてインカムをどう早めるか、その発想がすごく大事かなと思います。そのために、ちょっと強引にでも入金を取りに行かなきゃいけない面がデットにはありますよね。

一方、エクイティは返すお金ではないので、もう少しプロダクトを深掘りしたり、結果が出ていなければ違う広告展開を考えて集客してみたりなど、いろんな対策が打てると思います。

あと、余談ですがエクイティで一定の資金を調達した人は、日本政策金融公庫の「資本制ローン」の審査が通りやすくなります。これは画期的な融資で元本は借入から5~7年後に一括返済、業績が良くなってきたら金利が増えるという制度ですね。

世代によって狙うべき調達も変わってくる

鈴木さん中道さん

中道 鈴木さんの眼から見て、今、起業って増えてます?僕の感覚では増えてそうな気もするんですけど。

鈴木 増えているとは思います。昔みたいに、入った会社に終身雇用で居続けなきゃいけないような、ある種の強迫観念のような洗脳は解けてきていますし。学生起業家とか大学発のベンチャー、大学発のファンドなども最近多いので、これからさらに増えるんじゃないですかね。あと、意外に多いのがシニアベンチャー。50歳前後から起業するパターンです。

中道 その年齢でもデットって借りられるんですか?

鈴木 ぜんぜんいけますよ。逆に貸す側としては、社会人経験が長ければ長いほど信用が上がり、「ある程度事業を続けてくれるだろう」という意識を持ってくれますから。

中道 ということは、若手とシニア、世代によっても狙うべきところが変わってくるということですね。

鈴木 確かにそれはあるかもしれないですね。若手はエクイティ、シニアはデットとか。でもデットを使う上で確実に言えるのは、起業時によーいドンでお金を借りてしまった方がいいということです。創業時だからこそ使える融資も多いですから。

中道 そして、その先エクイティを使うときには鈴木さんのような存在がいればなお心強いと。

鈴木 成果や工数にもよりますが、専門の社員さんを一人雇うよりも絶対に月額を超えちゃいけないという哲学を持って仕事をしていますので、ぜひ気軽に相談していただければと思います。

中道 レンタルCFOみたいなサービスがないと、企業側はそれを自分でやらないといけないわけですもんね。

鈴木 そうですね。それに、もしファイナンスに精通した人が社内に専任でいたとしても、銀行からの資料提出に関する事務作業的なメール対応とか、そういったところまでやってくれるようなCFOに出会うのは難しい。結局、社長がひとりでやってしまっているケースが多いんですよね。

本来、社長になるような方には、プロダクトの開発とか、ファイナンス以外にできる能力が絶対にあるはずです。だから、社長さんにはそこに特化してもらって、私のような存在を使うことで自分の時間を捻出してほしいんです。そうすれば、会社にとってはより大きな成長を実現できるはずですからね。

鈴木さん中道さん

取材・文:髙橋晃浩

■株式会社リンクス http://rental-cfo.com/

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