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2019年02月26日

世界が注目!「給与前払いサービス」で20億人の貧困層を救う

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鈴木竜也さん

福岡に拠点を置くあるフィンテック企業が、いま世界から注目を集めています。従業員が給料を日払いで受け取れるサービスを提供しているドレミング株式会社です。

「世界の20億人の貧困層を助けたい」。労働者とお金のあり方を大きく変えうるこのサービスは、一体どのようにして誕生したのか。そして驚くべきは、その画期的なビジネスモデルでした。

鈴木 竜也(すずき たつや)

神奈川県出身。キズナジャパン営業本部長兼務。今迄、数多くの企業への労務管理システムの導入を行う。企業目線での課題解決提案が信条。ドレミング事業においても働く方、企業双方を幸せにする仕組みを提供するべく、日々奔走中。

日本企業で初めて「世界のフィンテック100」に選出

鈴木竜也さん

ドレミング株式会社の拠点は福岡市。しかしその目線は国内のみならず、世界に広く向けられています。

まずユニークなのが、2015年6月設立のベンチャー企業でありながら、すでにアメリカ、イギリス、シンガポール、インド、サウジアラビアと5つの海外拠点(全て別法人)を設けていること。これはスタートアップ企業としては稀なことです。

そのうちロンドンに拠点を置くイギリス法人は、世界有数のフィンテック企業が集うオフィス施設「レベル39」に日系企業として始めて入居しています。また2016年には日本企業として初めて、KPMGが選ぶ「世界のフィンテック100(※1)」に選出されました。ほかにも国内外の数々のベンチャー事業コンテストで賞を獲得しています。日本ではまだ無名といえる存在ですが、そのビジネスモデルはフィンテックの世界では非常に高い評価を得ているのです。

いったいどんなビジネスモデルなのでしょう。同社取締役・鈴木竜也さんに話を聞きました。

鈴木 「弊社が展開を進めているのが、従業員が給与を日払いで受け取れるシステムです。受け取りは基本的に電子マネーで行います。途上国の労働者は、給料日まで待てずに高利貸しから借金し、かえって生活が苦しくなるというケースが後を絶ちません。弊社のシステムを導入することで、そうした悪循環を断ち切れます。そして会社側にとってもこのシステムがあることが、労働者を呼び込み会社に定着させる大きな強みとなります。」

さらには各国の政府にとっても、給与支払いの電子化で税金逃れがしにくくなって税収が増え、現金を狙った犯罪も減らせます。加えて世の中的にも消費が促進され、経済が活性化する。そう、うまくいけばウィン-ウィンどころか「三方良し」「四方良し」が実現するビジネスモデルなのです。

そして何といってもこのシステムで驚くのが、労働者側も企業側も、システムの利用料をドレミングに支払わなくていいことにあります。実質、無料でシステムを利用できるのです。

鈴木 弊社は、受け取った電子マネーで労働者が買い物した際に、店側から決済手数料を受け取ります。これが主な財源となります。」

従業員が出勤し、退勤した瞬間に、税金や社会保険料を差し引いた正確な給料を自動計算し、従業員の求めに応じていつでも振込みを行う。これができるのはドレミングのシステムをおいてほかにはなく、当社の大きな強みとなっています。当社はこの技術をどう編み出したのでしょう?

(※1)フィンテック100は、世界のマーケットリーダーであるフィンテック企業50社からなる「リーディング50(Leading 50)」と、新しい製品やソリューションを有する新興フィンテック企業50社の「エマージング50」から構成され、デジタル決済からデジタル融資、インシュアテック、ネオバンクまで、フィンテックにより世界の金融サービス業界に変革をもたらしているフィンテック企業を紹介するものです。

自社用の勤務管理ソフトが大ピンチを救う

鈴木竜也さん

画期的な“給料日払いシステム”の秘密を探る上で重要なカギとなるのが、ドレミングの親会社にあたるキズナジャパンの存在です。

鈴木 「キズナジャパンは、現ドレミング代表取締役会長・高崎義一が1995年におこした会社です。高崎は元々兵庫でモスバーガーのフランチャイズ3店舗を経営していましたが、阪神・淡路大震災で大きな被害を被り売り上げが激減。そんな大ピンチを救うことになったのが、会社で使っていた従業員の勤務管理システムです。

これは大変な労力を要していたアナログ作業による従業員の勤怠管理やシフト表の作成を効率化しようと自社用に開発したものでしたが、それがオーナー仲間に口コミで広がっていきました。そこで高崎は、勤務管理ソフトを販売する会社として新たにキズナジャパンを立ち上げたのです。」

その後キズナジャパンは、日をまたいでの勤務や、他店への応援勤務など、複雑な勤務体系もカバーしリアルタイムで勤務状態を管理できる機能を武器に、ビジネスを堅調に伸ばしていきます。そして2008年にリーマンショックが起こり、生活苦から「給料日まで待っていては生活できない」と口にする人が急増したのを機に、働いた分だけ従業員が会社の口座から給料を引き出せるシステム「My給」を開発します。

さらにその後、大きな転機がありました。

志を貫くために1億円を借金

鈴木竜也さん

鈴木 「ベトナムの企業にMy給を導入する際、企業は給料を現金で手渡ししていました。なぜなら、従業員の多くが銀行口座を持っていないからです。口座がないので融資も受けられず、クレジットカードも使えない。だから家族が病気になるなど急な入り用のときは、消費者金融から借金することになる。しかしその金利が法外で、なんと300%にものぼります。日本では18~20%が一般的なので、とんでもない数字です。こうした土壌が労働者の生活を苦しめていたのです。」

その半面、貧困層の間でもケータイの普及率はかなりの高さでした。そこでキズナジャパンは、My給を進化させ、ケータイやスマホで気軽に扱え、グルーバルに対応する仕様を備えた新たな勤怠管理・給与計算・振込みシステム「Doreming」を開発。これこそが、ドレミングというフィンテックベンチャーの原点となりました。

鈴木 「創業者の高崎自身が板前出身なこともあり、『ブルーカラーの労働者が報われる社会を作る』という想いが事業の根幹にあります。My給の開発に際しては、主要株主から『元を取れない』と猛反対にあいましたが、高崎が1億円の借金をして全株を買い取り、開発にこぎつけました。ドレミングの事業もやはり社会貢献の意味合いが強いので、利益追求型のVCなどが入って自由が効かなくなるのをこれまでずっと避けてやってきました。」

精密な勤怠管理システムという、ほかにはない特殊性と、世界の労働者の苦境を救いたいという社会的大義。その二つが掛け合わさったことで、結果的にシステムのIT化・グローバル化が進み、遂には「世界のフィンテック100」に選ばれるほど画期的なビジネスモデルが誕生したのでした。

世界176ヶ国でのシステム導入を目指す

鈴木竜也さん

会社としての収益フェーズはこれからですが、ドレミングの事業はすでに各国で展開され始めていて、今後の可能性は計り知れません。

鈴木 「日本国内では2017年よりセブン銀行と連携し、従業員がスマホを通して働いた分の給料を自分の口座に振り込んでもらえるサービスを始めています。企業側は振込手数料を負担しますが、システム利用料に関しては企業側も従業員側も負担する必要がありません。

現在の日本の法律では“給料は現金払い”の原則が定められているため、電子マネーでの振込はできません。しかしドレミングの本拠地である福岡市は国家戦略特区に指定されていて、残業補助やランチ補助などの諸手当を電子マネーで払う試みが始まっています。ドレミングの事業は福岡市よりフルサポート事業に指定されており、全面的なバックアップをいただいています。福岡に拠点があることも、弊社の大きな強みとなっているのです。」

ちなみに日本政府は2018年末に、電子マネーによる給与支払いを解禁する方針を決めていて、2019年中にも解禁される見込みとなっています。

ベトナムでは2018年6月より、リエンベト郵便銀行の電子マネー決済でドレミングのシステムの導入がスタート。すでに約1万人の労働者が利用しており、毎日の給料を携帯電話を通じて電子マネーで受け取れるようになっています。

インドでは、財閥大手のリライアンス・インダストリーズと提携。同財閥では低所得者に5億台のスマホを提供する計画があり、そこにドレミングのクラウドアプリが導入される予定となっています。

またイギリスでは大使館や金融庁から、そしてサウジアラビアでは王位継承順位第1位の皇太子からビジネスモデルを高く評価され、いずれも事業計画が進められています。加えて「中東/アフリカのフィンテック・ハブになる」を国家戦略として掲げるバーレーンでも同社は商機を探っています。

こうして世界各国で同システムが広く普及することで、ドレミングは莫大な決済手数料を手にする可能性を秘めています。とはいえ同社が何より重視するのは、やはり「真面目に働く労働者の力になること」にあるようです。

鈴木 「世界176ヶ国にリアルタイム給与決済システムを無料で提供することを目指しています。ミッションは「世界の20億人の貧困層を、中間層に押し上げる」。それを音階の“ドレミ”のように、段階的に着実に実現していこうということから、ドレミングの社名がついています。我々はDoremingというシステムが、世界を本当に変え得るものだと信じています。」

企画・取材:大崎安芸路(ロースター)/文:田嶋章博/写真:栗原大輔(ロースター)

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